日本視野学会に参加して

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日本視野学会に参加して

 秋田市で行われた日本視野学会へ参加しました。
視野が狭くなる病気といえば、まずは緑内障です。早期に見つけることができれば、進行を遅くする点眼治療を行い、視野を維持することができます。多くの患者さんが潜在しているこの病気を、どうしたら早期に、少しでも多くの患者さんを、見つけることができるのか、を検討していました。
網膜色素変性症は、残念ながら、今でも治療、進行予防ができない病気です。ただ、経過中におきてくる合併症をコントロールしていくことにより、少しでもよい見え方を維持できるよう研究がなされていました。
視野が狭いのに気づかず運転中に交通事故が起こった例があり、運転免許更新時の視野の広さの検査をどのように組み込んでいくかも検討されているとのことでした。高齢になると交通事故の割合が多くなる結果があるそうですが、単純に年齢的な部分と、視野が狭くなる病気があることをわからないまま運転して事故を起こすこともあるとのことで、その部分を確認していくことの難しさを感じました。
 緑内障は、大変身近な病気です。最近、健康番組などでも取り上げられことも多く、「検査をしてほしい」と希望されて受診される方が多くみられます。緑内障は、40歳以上の20人に1人の割合でみられる、決して少なくない病気でありながら、初期のうちには全く自覚症状のない病気です。検査をしてみなければ、緑内障なのかどうかわからない、ということになります。他の病気で、受診している方、コンタクトレンズ検診で受診している方にも、緑内障の検診を勧めています。特に、近視の強い方、ご家族に緑内障の方がいらっしゃる方には、是非一度受けていただきたいと思い、声をかけています。
緑内障の診断に必要な検査は、眼圧(目の硬さ)、眼底検査(眼底3次元画像解析を用いた網膜の厚さ)、視野(見える広がり)を行います。この3つの検査を行い、その結果をどのように判断し、その後どのように経過を見ていったらよいのかは、私たち眼科医の役割になります。
今は、診断機器も進歩しているため早期に発見することができ、また、早期に発見できれば、点眼治療を継続することにより、見え方を維持することができる病気になりつつあります。是非、一度眼科での緑内障検診を受けてください。(院長)
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今回の学会でも、眼底3次元画像解析を用いた網膜の厚さの検査が、有効と、報告がありました。
眼底の断層写真を撮り、網膜の厚さを調べます。

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視力についてのお話(視能訓練士 佐藤)

新学期が始まり、学校健診の時期になりました。視力検査の結果が気になる方が多いと思います。
今回は「視力」をテーマにお話します。

◎遠くも近くも見える仕組み

私たちの目はカメラのレンズのように、見たい距離に応じて屈折力(光を曲げる力)を変化させ、焦点を網膜上に合わせる機能を持っています。これを目の調節機能といい、毛様体筋の働きにより水晶体の厚みを変化させて、見たいものにピントを合わせています。
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目が調節機能してないときに網膜上に焦点があっている状態を「正視」といい、焦点が網膜上にきていない状態を屈折異常となります。
屈折異常には「近視」、「遠視」、「乱視」があります。

◎近視とは、眼内に入った光が網膜よりも手前で焦点を結んでしまい、遠くがぼやけて見える状態です。
近視の原因は、眼軸長(目の長さ)と屈折の強さが関係しています。

●眼軸長が長い(軸性)
眼軸長が長いと、網膜の手前に焦点がきてしまい近視となります。ほとんどはこれが原因で近視となっていることが多い。
例えば学童期にみられる近視の原因はこのタイプ。遺伝や環境(スマホ、勉強などの近業が多い)が関係していると言われています。
●角膜、水晶体の屈折力が強い(屈折性)
角膜、水晶体の屈折力が強すぎると遠くを見たときに網膜の手前に焦点がきてしまい近視となります。
例えば、「仮性近視」や「白内障」の進行に伴う近視の原因はこのタイプ。

〇仮性近視とは?
近くを見る時は、毛様体筋という筋肉が収縮することによって水晶体が厚くなり、近くにピントを合わせ見ています。
しかし近くを長時間見ているとこの毛様体筋が過度に働きすぎて、収縮したままになってしまいます。そのせいで近くにピントがあったままの状態になってしまい、遠くが一時的に見にくい近視のようになっている状態。
点眼治療で毛様体筋の過度の働きを改善させると、視力が回復してきます。

Q:メガネをかけると近視は進むの?

A:メガネを掛けることや、掛け外しをすることが原因で近視が進むことはありません。
特に学童期は近視が進行しやすいので、定期的に検診で、メガネが合っているか様子をみていく必要があります。

Q:近視は何歳になったら進行がとまるの?

A:近視の進行には眼軸長が伸びることが大きく影響しています。
眼軸長は、体全体の変化に合わせ、成長期に長くなる傾向にあります。
そのため身長の伸びと同様、近視の進行も10代の頃が最も著しく、20代後半までに止まるのが一般的です。
ですが、最近ではパソコン、スマホなど近くを見ることが多くなり、成人以降に近視が発症したり、成人以降も近視が進行し続けたりする場合があります。

◎遠視とは網膜の後ろに焦点がきている状態です。
眼軸長と屈折の強さが原因で焦点が後ろにきてしまいます。

●眼軸長が短い(軸性)
眼軸長が短いと、網膜の後ろに焦点がきてしまい遠視になる。ほとんどの遠視はこのタイプ。
幼児の場合、まだ目が成長途中で眼軸長が短く、軽度の遠視があることが多い。
●角膜、水晶体の屈折力が弱い(屈折性)
角膜、水晶体の屈折力が弱すぎるために焦点が網膜の後ろにきてしまい遠視になるタイプ。

Q:なぜ、遠視は遠くが見えるの?

A:遠視は「遠くが見えるよい眼」と勘違いされがちですが、眼の屈折状態としては、本当は遠くにも近くにもピントが合っていません。しかし、眼には水晶体というレンズのはたらきをする部分の厚みを増し像の結ばれる位置をずらす「調節」という機能があることで、弱い遠視であれば遠くは見づらく感じないことが多いです。

ですが、遠視は遠くも近くも見る際、常に調節を働かせて見ているので下記の症状がみられることがあります。

〇目が疲れる/頭痛がする
子どもの場合、遠視であっても調節力が強いため症状が現れない場合が多いのですが、軽度の遠視でも年をとるにつれ、絶えず目の調節を必要とするため目と身体が疲れやすくなります。
疲れ目で受診した際に検査すると、遠視が隠れていることが多くあります。

〇勉強や仕事など近くを見続ける作業や細かい作業が長続きしない/集中力に欠ける
近くを見る時に、より大きな調節力が必要となるため、子供の場合は授業に支障をきたしたり、何をやらせても長続きせず飽きっぽいと思われたりと、誤解をされてしまう場合もあります。

〇寄り目(内斜視)になる
幼児で強い遠視があると、ものをはっきり見ようとして沢山の調節が働いてしまい、内斜視がみられることがあります。

◎乱視がある状態は角膜や水晶体の歪みにより、方向によって焦点位置がずれ、焦点が2か所できている状態です。
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乱視は角膜や水晶体のカーブがラグビーボールのような形で、屈折力が縦と横、あるいは斜めで異なり、焦点を一点に合わせることができません。
近視や遠視と組み合わさって起こる場合がほとんどです。
乱視があると一方向の線のみが明確に見えますが、他の方向はぼやけて見えるので縦や横に2重に見えてしまいます。

◎遠視=老眼と思われがちですが、
「老眼」は屈折異常(遠視)とは違い年齢とともにピントを合わせる力が弱まり、近くのものが見づらくなった状態のことをいいます。
目には見たいものの距離に応じてピントを調節する力があり、その力は近視、遠視に関わらず、どの方も年齢と共に徐々に弱くなってきます。
老眼の症状を感じ始めるのは個人差がありますが、遠くがよく見える状況でしたら、だいたい40歳くらいで近くのもの(30㎝位先)にピントを合わせ難くなると言われています。

Q:近視の人は老眼にならないの?

A:「近視の人は老眼にならない」と聞くこともありますが、そうではありません。
近視の方がメガネを掛けずに近くを見れば見えますが、遠くがしっかり見えるメガネを掛けていれば、少しずつ近くは見えにくくなりますので、近視の方でも必ず同じく老眼はみられます。

Q:老眼鏡を掛けると老眼が進む?

A:老眼鏡を用いたからといって、老眼鏡が急に進むわけではありません。
老眼鏡を掛け始めた時期から徐々に老眼が進行し、ピントが合う近方距離が遠ざかるので、老眼鏡を掛け始めたのが原因で進んだという錯覚してしまうかもしれません。

◎外来では、こんな検査をしています。
★ 屈折検査
まず、屈折異常(近視、遠視、乱視)がどれくらいあるのかを大まかに機械で検査をします。
特に子どもの場合は目のピント調節力が強いので、この検査では本来の値より近視は強く、遠視は弱い値に出てしまいます。
そこで目のピント調節を一時的にできなくする目薬をいれてからこの検査を行うことがあります。その検査をすることで、本来の屈折異常値が分かり、仮性近視の有無も分かります。
new_レフ検査
★ 視力検査
視力検査では、「裸眼視力」と「矯正視力」を測っています。

「裸眼視力」:眼鏡やコンタクトなしで見える視力値のため、体調や環境などで変動することがある。
「矯正視力」:屈折検査の値を参考にレンズをいれて、一番見えた視力値。この視力値に低下がみられると、白内障や眼底のご病気がないか疑われます。
new_視力検査

★同じサイズのC(ランドルト環)が3つ以上正答できたところが視力値になります。

Q:視力検査で目を細めてみてもいいの?

A:目は細めることでピントが合い、見やすくなるため実際の視力より良くでてしまい正確な視力の値とはなりません。そのため、目は細めないで見て答えるようお願いします。

Q:視力表の「C」の切れ目は、なんとなく分かるがぼやけて見えていても答えていいの?

A:視力表の「C」は「最小分離閾」といって2点が分離していることがわかる最小のところを検査しています。そのため、切れ目の境目がわかるところを視力値としているため「C」がぼやけていたとしても、なんとなく色のコントラストで切れ目が分かったとしてもこの検査表ではその値を視力値としているため、答えていただいて大丈夫です。
new_1ランドルト環
(以上の内容について、もう少し詳しい内容ののパンフレットを作成しました。受診の際にはご覧ください)
new_佐藤掲示板

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日本臨床眼科学会に参加して(視能訓練士 小原)

 11月3日から6日に京都で行われた日本臨床眼科学会に参加させて頂きました。
多くの講演を拝聴し、どれも貴重な内容で、大変勉強になりました。
なかでも印象に残った講演は、“眼疾患と視野障害”についてです。
緑内障や網膜疾患(加齢黄斑変性等)、視神経等の疾患を取り上げ、その視野障害の特徴と最新の話題についてという内容でした。
そのなかでも、視野と自動車事故との関連については、大変興味深かったです。日常生活を送る上で、自動車は移動手段として欠かせないものとなります。日本では、普通免許取得・更新にあたっては、高度な視野障害があっても、中心視力が良好であれば、免許取得・更新は十分可能になります。しかし、視野障害の度合いが高いほど、自動車事故のリスクは高くなり、それが原因で発生した事例もあることと思います。事故防止のために運転中止を意見することは簡単ですが、中止することにより、日常生活の支障が出てしまし、鬱状態になりやすいという報告もあります。
運転するにあたり、視野障害のある方に、どの部位にどの程度の注意が必要であるかを踏まえた適切な助言が求められるという内容でした。
視野障害の方が事故を起こしやすいと予想される場面を織り込んだ“視野狭窄患者用ドライビングシュミレーター”という運転評価に用いる視野検査法を活用し今後検討が必要ということでした。
今回の学会に参加させて頂き、改めて眼科分野の面白さや基礎の大切さを感じ、とてもよい刺激となりました。(視能訓練士 小原)